お金の問題
お金の問題
離婚について考えることは、「離婚後の生活」について考えることでもあります。
「離婚した後でも、財産分与や慰謝料の請求はできるから」と、お金の問題を先延ばしにする方がたまにいますが、弁護士としての経験から言うと、「とにかく早く別れたい!」という状況であったとしても、よほどのことがない限り、お金の問題は離婚前に解決しておいた方が良いと思います。
離婚に関わるお金の問題について、慰謝料、財産分与、養育費、年金分割、婚姻費用について、下記にまとめましたので、ご参考にしてください。
- 慰謝料・・・・・相手の不貞や暴力などによって「精神的苦痛」を受けたことに対する損害賠償金のことです。
- 財産分与・・・離婚する際に、夫婦が築き上げてきた財産を公平に分配することです。
- 養育費・・・・・子供が成人として自立するまでに必要となる費用です。
- 年金分割・・・平成19年4月以降、年金を一定割合で妻が受給できることになりました。
- 婚姻費用・・・妻は別居中の生活費を夫に請求することができます。
支払の約束が守られない場合は、強制執行も可能です。
離婚とお金に関して、このような方はご相談ください。
- 離婚した場合、どれぐらいの財産分与や慰謝料をもらえるのか知りたい
- 離婚には応じてくれそうだが、お金のことでは揉めそうだ
- 相手が納得のできない条件を持ち出してきた
- 離婚後の生活や子供のためにも、正当な財産分与や慰謝料を受けとりたい
慰謝料とは
慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛による損害の賠償です。
慰謝料が認められるのは以下のような場合です。
- ① 不貞行為
- ② 暴力・犯罪・悪意の遺棄
- ③ 婚姻生活の維持に協力しない
- ④ 性交渉の拒否
単なる性格の不一致や価値観の違いでは、慰謝料請求できない場合がほとんどです。
また、お互いに離婚原因がある場合も、認められにくいと言えます。
不貞については、①通常不貞行為が行われ得る場所、すなわち密室で、②不貞行為が行われるに足りる程度の時間一緒にいたことについての客観的証拠があり、③それが裁判所に提出できるような形で証拠化されていることが、慰謝料請求をしていくために必要となります。
慰謝料はどれくらい請求できるのか?
慰謝料の額は明確な基準はなく、離婚に至る経過、婚姻期間、子供の有無、双方の有責行為の程度や回数等によって決められます。
現実的には、100~300万円程度が平均的です。
不貞の場合、高くても500万円位が相場ですが、夫が不貞した場合で、不貞相手女性に子供ができたようなケース等では、より高額になる可能性もあり得ます。
不倫相手への慰謝料請求
不倫の結果、結婚生活が破綻して離婚に至った場合、配偶者だけでなく、不貞相手に対しても慰謝料を請求することができます。
但し、不貞のあった時点で既に結婚生活が破綻していたと見做される場合は、慰謝料請求を認めなかった例もあります。
慰謝料については、気持ちよく再スタートするためには実態に沿った現実的な交渉を行うことが大事です。
いたずらに無理な主張をしても時間と労力の徒労に終わってしまいます。客観的な基準を弁護士に相談すると良いと思います。
財産分与
財産分与とは、離婚する際に夫婦が築き上げてきた財産を公平に分配することです。
財産分与には
- ① 婚姻中に夫婦が共同で築いてきた財産の清算
- ② 離婚後の生活に対する扶養料
- ③ 離婚による慰謝的要素
という3つの要素を含み得ますが、その中心は①の清算的要素です。
財産分与の対象となる財産
財産分与の対象となるのは、「夫婦で築き上げてきた財産」です。
預貯金、株、不動産、自動車など、結婚後に夫婦が協力して築いた財産であれば、名義の如何を問わず、財産分与の対象となります。
なお、結婚前に築いた財産や、結婚後に祖父母や親から贈与されたものや相続財産などは、特有財産と言い、財産分与の対象となりません。
分与の割合はどのように決めるか?
原則としては、財産分与の割合を等分とする「2分の1ルール」が定着しています。
上にも述べましたように、必ずしも自分名義の財産だから自分のもの、という訳ではありません。
夫婦の一方が働いて得た収入で家計を支え、もう一方が家事に専念して生活を支えているという場合も見られます。
夫婦共働きの場合にも、家事や子育て、介護の必要性等によって勤務形態が制限されるということもあるでしょう。
こういったことを考慮すると、財産の名義が必ずしもその財産の形成への寄与の実態を表しているとは限りません。
そこで、夫婦が結婚後に築いた財産は実質的には共同で形成したものとして、「2分の1ルール」が原則として適用されているのです。
但し、2分の1と言っても、自宅不動産をどうするのか(どちらがいくらで引き取るのか、売却するのか。)といった問題は、話し合い等によって決めてゆくことになります。
このような方はご相談ください
- 財産分与について、どこまで主張できるか知りたい
- 住宅ローンが残っている自宅の財産分与について知りたい
- 財産分与について、相手との間に意見の違いや争いがある
養育費について
養育費とは、子供が社会人として自立するまでに必要となる費用です。
衣食住の経費や教育費、医療費、娯楽費など、自立するまでに必要となるすべての費用が養育費にあたります。
支払期間は、原則として20歳までです。民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられましたが、養育費の支払においては従来通り20歳までが一つの目安とされています。
養育費負担義務とは
親には未成熟な子供を養育する義務があり、これは自分の生活に余裕がある場合に行う「生活扶助義務」ではなく、自分が経済的に苦しくても行うべき「生活保持義務」と言われています。
子供が親に対して養育費を請求できる条件は、
① 子供が扶養を必要とする状況にあること、
② 扶養義務者が生活保護を受けるぐらいに扶養能力がないなどの事情がないこと
の2つです。
養育費の算定
養育費の額は、負担する側の経済力や生活水準によって変わってきます。
基本的には、双方の収入のバランスに応じて養育費を算定していきます。
財産分与や慰謝料は一括で支払うのが原則ですが、養育費は通常定期的に負担していきます。
目安として、裁判所が早見表を示しています。
養育費の変更
養育費の支払いは、場合によっては長期間に及びます。
その間に、事情が大きく変わることもあります。
例えば、子供の進学の問題や支払い側の倒産・失業、受け取る側の失業、再婚などがそれにあたります。
基本的には、離婚時に決めた養育費の額や支払い期間を変更することはできませんが、経済的事情が大きく変化した場合には、理由が正当であれば、養育費の増額や減額が認められるケースも多くみられます。
まずは、お互いに話し合い、合意が得られない場合には家庭裁判所に調停を申し出ることができます。
子供の養育費がいくらかかるのか確実なことは分かりませんので、意見の相違が見られることも多々あります。
このような方はご相談ください
- 離婚した場合、子供の養育費をどれぐらいもらえるのか知りたい
- 養育費に関して、相手と見解が違ったり、争いがある
- 子供のためにも、正当な養育費を受け取りたい
- 経済的事情が変わったので、養育費の変更を要求したい
年金分割
現在、専業主婦が老後に受け取る年金は、国民年金の基礎年金だけです。
それに対して、夫が会社員や公務員のような給与所得者の場合、基礎年金に加えて、厚生年金の報酬比例部分を受け取ることができます。
これまでは、離婚した専業主婦は、自分の基礎年金しか受給できなかったのですが、平成16年に成立した年金制度改革関連法で、年金を分割する制度が設けられました。
年金分割の制度
年金分割制度には、合意分割と3号分割があります。
- 合意分割
- 合意分割とは、当事者間の合意や裁判手続きにより分割割合を定めたときに、当事者の一方からの年金分割請求によって、婚姻期間中に納めた保険料の額に対応する厚生年金(共済年金)を当事者間で分割することができる制度です。
- 分割割合
- 分割割合は、話し合いによって決めますが、最大2分の1までです。
話し合いで合意が得られない場合には、家庭裁判所で分割割合を決めることができます。3号分割は、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間(特定期間)について、離婚をした場合に、当事者の一方からの年金分割請求によって、第2号被保険者の厚生年金(共済年金)を2分の1に分割することができる制度です。
つまり、妻が専業主婦だった期間は、夫の厚生年金の保険納付実績を自動的に2分の1に分割できるようになりました。
夫が要求しても2分の1より割合を下げることはできません。
年金の問題は生活設計に大きな影響を与える問題なので、十分に注意して下さい。
婚姻費用について
婚姻費用とは、夫婦が生活を送っていく上で必要なお金のことです。
民法の規定により、夫婦は相手の生活を自分と同じレベルで維持し、夫婦の資産、収入その他の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する義務があります。
すなわち、離婚前の別居中、離婚の協議中、離婚調停中、離婚訴訟中であったとしても、相手の生活を維持するため金銭の援助を行わなければなりません。
妻が夫の経済力に依存している場合、別居中の妻から婚姻費用分担請求を行うことになります。
婚姻費用の基準と算定
婚姻費用分担の基準と算定の仕方は、夫婦の収入や資産、その他事情を考慮して決められることになっています。
婚姻費用の金額は、裁判所が早見表で示しているので、参考にして下さい。
また、別居に至った原因を作った側からの請求では、分担義務の程度が慎重に判断されることになっています。
このような方はご相談ください
- 婚姻費用を請求したいが、相手が応じてくれない
- 別居中の生活費や教育費を払ってくれることになっているが、実際には払ってくれない
支払いの約束が守られない場合
離婚の際に決めた、財産分与の分割払いの支払いがなされなかったり、養育費の支払いがなされない場合、法的に効果的な手段をとることができます。
強制執行
協議離婚の際に決めた条件が守られない場合、条件の取り決めが契約書等の書面になっていれば、これを証拠として地方裁判所に提訴し、判決をもらって、相手の財産を強制執行することができます。
また、書面が公正証書になっている場合で、「履行が滞った場合には強制執行されてもかまわない」という条項が入っていれば、すぐに強制執行手続をとることができます。
調停離婚や審判離婚の場合は、調停証書や審判書が判決と同じような強制執行力がありますので、この場合も、給料の差し押さえ等の強硬手段をとることができます。
いきなりこのような強硬手段をとるのが難しい場合は、まずは家庭裁判所の履行勧告、履行命令の手続を取る方法もあります。
離婚とお金に関して、このような方はご相談ください。
- 財産分与や慰謝料の分割払いが滞っている
- 約束した養育費が支払われない

